アルコール依存症とはどんな病気か


アルコール飲料を長期にわたって連用していると、だんだんと強くなって大量に飲まないと酔わなくなります。やがて酒による問題が出始め、年とともにひどくなっていきます。しかし、いつでも飲める酒がないと不安であったり、飲酒が悪いとわかっていても、飲まないで辛抱することができません。アルコールの量を控えたい、やめたいと思っても自分ではどうすることもできず、飲み続けてしまいます。  どうしてこうなるかというと、アルコールの持つ依存性によって、アルコール依存症が発病したためです。  一口で言えば、アルコールをコントロールして飲むことができなくなった(コントロール障害)ということです。 この病気になった人は少量でもアルコールを口にすると、程よい量で切り上げることができないで、やがて必ず酒による問題を起こしてしまいます。つまり飲みながら正常な日常生活をすることは、もはやできなくなっているのです。  コントロール障害があるかないかは、その人のアルコールの飲み方を見れば容易に判断することができます。 ?飲酒の時間、場所、量などが、住んでいる社会の基準から外れてきます。 ?今日は少量で切り上げようと決意して飲み始めるが、絶対にそのとおりに実行できません。 ?いつでもアルコールを飲めるように準備しています。夜中でも買えるところを知ってます。酒を隠しておきます。自販機用の小銭を欠かしません。 ?冠婚葬祭や宴会に行くときはあらかじめ飲んでいきます。また人が注いでくれるのを待てずに手酌で飲みます。  人間関係を破壊しながら進行していくのが、この病気の特徴です。その原因の一つは、アルコール依存症者の飲酒中心的な考えや行動にあります。いったんアルコールが入ると、次の酒を飲むことしか考えられず、周囲の人のことまで頭が回りません。そのため自分の飲酒欲求にのみ奉仕する自己中心的な人間のように見えてしまいます。  周りの人の病気に対する無理解も人間関係を悪くする原因です。病気のためにアルコールをコントロールして飲むことができなくなっていることに気がつかず、アルコール依存症者を意志が弱く、道徳的に欠陥のある酒好きな人間として、非難したり軽蔑したりするのです。  アルコール依存症は回復はあっても治癒のない病気だといわれています。飲酒に対してコントロールの効かない体質は一生治ることはありません。アルコールさえ口にしなければ、その他の点では病気になる前とまったく変わるところがないのです。  アルコール依存症の治療を受け断酒し始めた時期は、大きな手術のあとと同じだと思った方が無難です。はじめの3〜4ヶ月の間は飲まないでいるだけでも大きなエネルギーが必要で、その上に仕事もし、それ以外の生活上の問題にも対処していくのはかなり困難なことです。まずは何もしないで自助グループ(断酒会・AA)に出席しながらやめ続ける力をつけること、そのあとで仕事のことを考えるようにしたほうがよいのです。  アルコール依存症の治療には、再飲酒はつきものであるといえます。飲酒すると確実に病気は悪化するし、失うものも多いです。しかし、この病気は何回か失敗しないと、本当に酒をやめる気にはならないものなのです。大切なことは飲酒を今後の回復のために生かせるかどうかです。飲酒した場合には、自分のどこに問題があったかを考えて、それを改めていくようにするとよいのです。

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